家庭科に服育をいかす ~環境と社会性のアプローチから~/尾教研丹葉支部家庭科研修
- 対象:
- 尾教研丹葉支部 中学校家庭科教論
- 日時:
- 2010年8月5日(木)13:00~16:00
- 目的・経緯:
- 尾教研丹葉支部では家庭科分野についてこれまで様々な研究や実践の取り組みを進めてこられました。 そのこれまでの取り組みに新たな視点を加えようと、今夏の研修では「服育」を取り上げ研修を企画していただきました。
服を着る目的と“服育”
衣服についていつも教えておられる家庭科の先生方を対象とした研修ではありますが、改めて衣服について考えてもらいたいと「私たちはなぜ服は着るのか」ということろから紐解いてまいりました。
服を着る4つの目的「防護性・機能性・象徴性・審美性」はあたりまえのことなのですが、それらが「自分のために必要な役割」(防護性・機能性)と「社会の中で求められる役割」(象徴性・審美性)に分けることができるという視点は先生方も新しく感じられたようでした。
もともとはこのように様々な目的を持って着用されている衣服なのですが、現代社会の中での関心はあまりにも審美性(ファッション性)に偏っています。家庭科の中ではそれだけではない衣服の役割や力を子ども達に伝えることが大切なのではないかということで、服育という観点からの取り組みや実践についてお話させていただきました。
衣服を環境学習の手がかりに
まず前半は環境からのアプローチについてです。
衣服を単なるモノではなく、世界や世界のいろいろな環境問題と関わっているという図式の中で見るとそのとらえ方はまったく変わってきます。
服育として取り組むべき環境教育は単に衣服の3Rを教えるだけでなく、衣服を通して様々な環境問題や世界とのつながりを知り、ライフサイクル思考を持った上で衣服の3Rなどの具体的活動につなげていくことです。
単なる衣服教育ではなく、より広い視野を持ち、より多くの事柄へ興味を抱くことのできる衣服教育の可能性を持つ服育を現場の先生方にも感じていただきたいと考えています。実際先生方の感想の中にも「普段何気なく着ている服から多くの課題があることを具体的に知ることができた」とあり、新たな視点を得ていただいたようでした。
また、衣服の環境授業の内容を広げるペットボトルリサイクル繊維を取り出す実験の体験はとても好評でした。
実際に一人ひとりの先生に実験セットを作るところから実験までやっていただいたので、きっと授業の中でも上手くいかしていただくことができるのではないでしょうか。
TPOの大切さを考えるきっかけを
続いて後半は社会性からのアプローチについて講義させていただきました。
衣服のTPOについてはもちろん授業の中で取り上げてはおられるのですが、現状あまり時間をかけていなかったという先生もおられるようでした。
しかしTPOの内容やオンタイム・オフタイムの違いなど改めて押さえていくとその重要さを再確認していただいたようで、「やはり今だからこそTPOについて考えさせる授業をしていくことが大切だと思います」という感想も出てきていました。
その授業提案として体験していただいた「衣服のTPOを学ぶ授業」についてもぜひ取り入れてみたいという声が多くあがっており、先生方にとっても衣服の社会性を考えるきっかけになったようでした。
衣服のコミュニケーション力をアップするためのスキルとしてのTPOはもちろん、それを支える思いやりのこころを一人でも多くの子ども達に伝えていっていただきたいですね。
先生のご感想
- 衣服を通して、自分の生活を見つめ直す家庭科の学びをどのように実践していくか私たち家庭科教師の大きな課題です。 環境からのアプローチでは、大量生産、大量消費、大量廃棄の現代、生産・製造工程がブラックボックス化されています。だからこそ、衣服でも、原料→紡績→縫製→着用→廃棄のライフサイクル思考を持つことが大切だと思いました。各過程でどのように世界と環境問題とかかわっているか子どもたちと探求していく授業づくりを目指していきたいと思いました。 また、社会性からのアプローチでは、衣服は知らず知らずのうちに着ている人の人となりを伝えている。「服装」は見せたい自分に近づく一番簡単な方法であるという言葉はとてもストーンと落ちました。TPOを考えた着こなしやTPOにあわせた着こなしができる子どもたちを育てたいと思いました。 今回の講座は、私たち家庭科教師の大きなパワーになり、たくさん明日からの授業へのヒントを頂き心から感謝しています。
外山広美 先生(家庭科)愛知県犬山市立南部中学校
参加者のご感想
- 3時間があっという間と思うくらい分かりやすく楽しい研修でした。特にペットボトルから再生繊維ができる実験は興味深く楽しかったので授業でも使って子どもたちにへぇ~と言わせたいと思います。講義の内容も教科書の内容をさらに深くしてこういうポイントで押さえればいいのかといくつもメモさせていただきました。これからも機会がありましたらいろいろな衣生活の授業のヒントを教えていただければと思います。(中学校家庭科教諭)
- 服育ということばを初めて聞きましたが、確かに服装と教育は切っても切れない関係なんだということに気付きました。TPOを生徒に考えさせる形の授業は参考になりました。取り入れてみたいと思います。(中学校家庭科教諭)
- 本校ではグループでの活動、特に言語活動について取り組んでいるので、衣服と社会性のところの模擬授業はとても参考になりました。一年生の授業でぜひ行わせていただこうと思いました。有難うございました。(中学校家庭科教諭)
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