“育てる”古着リサイクル ~リサイクルで人を育て、地域を創る~
- No.:
- 第3回 京都服育定期セミナー
- 日時:
- 2010年11月27日(土)
- メイン:
- “育てる”古着リサイクル ~リサイクルで人を育て、地域を創る~
- メイン講師:
- NPO法人ザ・ピープル 理事長 吉田 恵美子
- サブ:
- いらなくなった服はどうなるの?
- サブ講師:
- 京都服育研究会 長屋 博久
- 会場:
- こどもみらい館
- 主催:
- 京都服育研究会
- 後援:
- 京都市ごみ減量推進会議
- 協力:
- 京都工芸繊維大学、繊維リサイクル技術研究センター
テーマ:講師:NPO法人ザ・ピープル 理事長 吉田 恵美子
ピープルのあゆみ
今回は古着リサイクルを中心に活動されているNPO法人ザ・ピープルの理事長 吉田さんにおいでいただき、一歩進んだ古着リサイクルの取り組みについてお話いただきました。
ピープルは1990年に地域の主婦が中心となり「自分たちも地域のために何かしたい」と設立された団体で、「元気なまちには、元気な主張を続け、元気に行動する市民がいる」をモットーに福島県いわき市において20年にわたり活動を続けてこられました。
活動を始めるにあたり身近な問題としてごみ問題を取り上げ、市民にアンケートをとられたそうです。その回答の中で目についたのが「古着を捨ててしまうのはもったいない」という意見で、これが古着を中心とした活動の始まりでした。
当初はドラム缶の回収ボックスに入れられた地域の古着を仲間と集め、それを地域の古物商に渡していただけだったそうですが、徐々にその中から販売できるものをイベントやバザーなどで販売するようになり、ついには店舗をかまえるまでになりました。
順調に進んでいた活動でしたが、ある時転機が訪れました。
景気の悪化とともに地域の古物商が古着を引き取ってくれなくなったのです。ピープルのもとには古着の山だけが残りました。
また店舗として出展していたショッピングセンターからも店舗運営についてクレームが出るなど、ピープルを取り巻く状況は急に厳しくなり、人も少しずつ離れていってしまいました。
その中で代表を交代した吉田さんは団体をNPO法人にし、ボランティアスタッフの有償化、店舗運営の見直し、そして古着の新たな販路の開拓など新しい取り組みを次々と打ち出し現在のピープルの基盤を整えたのです。
古着リサイクルから市民啓発まで
ピープルの活動の中心は古着リサイクルですが、そのリサイクル内容は少しでもごみになるく古着を減らしたいと多岐にわたっています。
現在は盗難を防ぐためドラム缶から改良されたリサイクルボックスで集められた古着は(2009年績206.3t/年)、全て人の手で選別されその状態や素材によって以下の6つに分けられます。
1.地域内リユース 13.4%
店頭販売、イベントバザー販売
2.ウエス材 8.3%
障がい者によるウエス作成、工場などに販売
3.エコウールリサイクル 16.5%
地域外/反毛し自動車の内装材などに
地域内/反毛機械で綿にして(ウール100%セーターのみ)、フエルト手芸の材料「エコモコ君」に
4.リメイク品製作 1.2%
ピープルリサイクル工房にてバッグやお手玉などの小物に
5.輸出・海外支援用古着 52.3%
専門業者を通じて輸出
6.焼却処分 8.2%
どうしてもリユース、リサイクルできなかったものは焼却
中でも特に印象的なのは障がい者との連携です。
ピープルが店舗併設の小規模作業所(3名)を開設するまでは、この地域には障がい者の働く場所はなかったのだそうです。
それが「障がい者の人も一緒に住める社会を作るのも私たちの活動の一環」と語る吉田さんの言葉通り、現在はなんと25名もの障がい者の方々が働く場として定着しているのです。
地域の様々な力をつなぎながら古着リサイクルを進めるピープルでは、集められた古着の9割以上を何らかの形でリユース・リサイクルしています。
全国的な古着のリユース・リサイクル率はまだまだ低いので、その活動のすごさが分かります。
またこういった事業を通して、次代を担う若者の育成にも熱心に取り組んでおられ、古着リサイクルに関心の薄い若者層とともに古着ファッションショーの開催や、中学生などのボランティア体験の受け入れ等積極的に行っておられます。
古着仕分けのボランティア体験をした中学生からは、「これまでは服を買う時に何も考えていなかったけど、これからは考えて買います」といった感想も出てくるようで、単なるボランティア活動ではなく、自分たちの消費行動を見直す貴重な体験の場となっているようです。
この他に行政や他の団体と協力して古着だけにとどまらないエコ資源回収の取り組みを進めたり、私たちのような企業と連携して環境配慮型学校制服MOTTAINAISCHOOL(もったいないスクール)の普及を進めたりと、多様な主体と関わりながら活動の輪を広げておられます。
思いを繋ぐ、世界と繋がる
ピープルでは古着リサイクルで得た収益を、地域の活動から日本国内、そして世界へと広げていきたいと海外支援活動を進めています。
タイの山岳民族の子どもたちのための通学寮の整備や給食の供与、ザ・ピープル奨学金のスタートといった未来を担う人材への支援や、ラオスの女性たちにピープルの活動の理念や古着の活用法を伝える女性支援など、様々に行っておられます。
地域から世界へ繋がるその活動は平成18年にワンガリ・マータイさんが福島県を訪れた時にも高く評価されました。
最後に吉田さんは伝えたいこととして「市民が主体的に考えて動かなければ変わらない」というメッセージを残されました。
地域によって実情はそれぞれ違いますが、考える市民が集まった時にその地域なりの取り組みがきっと花開くのですね。
講師のご紹介
- 吉田 恵美子
- NPO法人ザ・ピープル 理事長
良女子大学文学部史学科卒業後、中学校教諭を経て平成元年ザ・ピープル設立に参加。平成16年NPO法人格取得に伴い理事長就任。障がい者小規模作業所の運営にも携わる。福島県国際化施策基本計画検討委員会委員、小名浜まちづくり市民会議理事、もったいないネットワーク福島運営委員、フラガールズ甲子園実行委員会事務局長など役職多数。
いらなくなった服はどうなるの?講師:京都服育研究会 長屋 博久
サブセミナーでは日本全体の衣服リサイクルの現状と京都市の取り組みについて、服育研究会の長屋よりお話させていただきました。
日本では一人当たりなんと年間約10kg(Tシャツにして約83枚分)もの服が処分されています。その中でリユースやリサイクルにまわされるのは23%で、残りは燃やしたり埋め立てたりで廃棄処分されています。服のリサイクルし難い現状や、その中でも進められているリサイクル方法がマテリアルリサイクル(反毛)、ケミカルリサイクル(繊維to繊維)、ウェス(工業用雑巾)などになります。
では京都市ではどうなのでしょうか?
平成18年のごみ袋有料化以降ごみの量は減っています。
市のごみ回収の中では服は燃えるごみとして捨てることになっていますが、PTAや自治会、こども回などが中心となりコミュニティ回収も進められています。このコミュニティ回収で集められる衣服はは京都市でごみとして出される繊維廃棄物(服以外も含む)の約5%になります。
まだまだ進んでいない繊維リサイクルを進めていくためには用途開発、回収ルート整備も必要ですが、きちんとリサイクルの目的を考えて行動するグリーンコンシューマーを育てるための消費者啓蒙も重要になってくるのです。