もったいないが繋ぐことばと布
- No.:
- 第7回 服育ラボ定期セミナー
- 日時:
- 2008年11月15日(土)
- メイン:
- もったいないが繋ぐことばと布
- メイン講師:
- 詩人 里みちこ
- サブ:
- 衣服の3RとLCA~環境問題に見る衣服の現状と今後~
- サブ講師:
- 服育研究会 有吉直美
もったいないが繋ぐことばと布講師:詩人 里みちこ
心で聞いて、感じてもらいたい
今回のセミナーは、ことばに魔法をかけて素敵な詩にしてしまう詩人の里みちこさんにおいでいただき、「もったいない」をキーワードに言葉の魅力や布とのかかわりを語っていただきました。
セミナーの冒頭、まず里さんが先生方におっしゃられたのは「今日はメモをとらないでください。心で感じながら聞いてください。」というお願いでした。
いつもとは違うセミナーの様子にちょっぴり面食らった様子の先生方の緊張を、里さんらしい方法「全員参加の詩の朗読」でほぐしてくださいました。
「空を見てごらん」という50音と詩を組み合わせた詩を、50音部分は先生方、そしてそれに続く詩の部分は里さんというふうにみんなで声を出して朗読しました。
元気がわいてきそうな言葉と50音のリズムが心地よい詩をみんなで朗読していくうちに、先生方の緊張も少しずつとけていったようでした。
「物、者、モノ(言葉)」すべてをいかす
この「空を見てごらん」の詩は里さんが3年前に奥出雲の小学校で子どもたちと一緒に学校生活を送った時に作られた詩なのだそうです。
捨てられる直前だったシャツ地をつないで作ったこの作品には、出会った人との思い出が数々込められた「物、者、モノ(言葉)」のすべてをいかしてできた詩なのです。
目に見える物だけを「もったいない」と大切にするのでなく、人との出会いやことばもすべて大切にしていかしていきたいという思いがいっぱいに込められてひとつの作品になっているのです。
呉服屋の娘さんとして育てられた里さんにとって一本の糸、一枚の布すべてが愛おしいもので、作品はもちろん実はこの日の衣装も捨てられていたスカートを利用して作られたものでした。しかもfeel(感じる)の過去形、過去分詞形であるfeltにひっかけたフェルト素材のスカートと、ひとつひとつに意味を持たせるこのアイデアはまさに里さんならではですよね。
「空を見てごらん」の隣に展示された「希望」の詩などは、なんと賞味期限切れのお醤油が使われていたりと、どの作品にも思いがけない「もったいない」が溢れていました。
この他にも体を使って漢字の成り立ちを考えたりと、漢字やことばの楽しさについてのお話は大人の私たちにとってもとても新鮮で改めてその魅力に気付かされるものばかりでした。
いつも感性のアンテナを
里さんの詩の中には子どもたちへ伝えていきたい大切なことばがたくさんちりばめられています。
例えば「表」と「裏」です。表にばかり目がいっている人が多い中、心を耕して裏の部分も大切にしていかなければならないと説かれています。
また大人になるにしたがって強くなってしまう固定概念をとっぱらい感性のアンテナを敏感にすることが大切だとも強調されていました。便利なものに囲まれて五感が鈍くなってしまっている私たちに違った角度からの言葉や布へのアプローチはとても新鮮で、その大切さに気付かせてくれました。
発見する喜びは子どもも大人も同じです。感性を磨いて想像力を働かせることが、創造力を生み出す原動力にもなるのです。
私たちの周りにあるあたりまえのモノの気付かなかった魅力を知ることができた素敵なセミナーでした。
参加者のご感想
- 何とも言いがたい会でした。感想なんてどのように言えばよいのか分からずただただ驚くような会でした。まだ心の整理がつかず、自分の底が(何か分からない)ぐらっときた会でした。(中高等学校 家庭科教諭)
- 想像と違う内容でしたが心にひびく内容でした。一人の人間としても教師としても、いつもアンテナをたてて五感を働かせて子どもたちと関わっていきたいと思います。今日は里さんに出会うことができてとてもよかったです。ありがとうございました。(小学校教諭)
- 今日はかなり感性が刺激されました。ことばの裏にあるものに多少こだわってきたので久しぶりに良い日になりました。布にも退職後触れるようになり、裁縫で孫の物を作ったりパッチワークも少しやっています。これもよい勉強になりました。(元小学校校長)
講師のご紹介
- 里 みちこ
- 詩人
人やものへの愛情を、ことばを使って紡ぎあげていくやさしい詩を作り続けている。 学校や様々な会に招かれての詩語りの他、毎朝大阪城でも詩語りの活動を続けている。 不要なものに命を吹き込み詩と融合させて発表した「もったいない展」は、全国で巡回 展示される。数年前には豊かな自然に魅せられた島根県の奥出雲町立三沢小学校に編入、 一ヶ月の内一週間の学校生活を一年間送り子どもたちと交流を深める。 朝日新聞でコラム「感字在菩薩」(2001年1月~12月)、「字遊自在」(2003年9月 ~3月)を連載。 詩集に「さながら」「かけはし」「玉繭」がある。
里みちこ 公式ホームページ http://sigatarikobosato.web.fc2.com/kotobanokobako.html
衣服の3RとLCA~環境問題に見る衣服のの現状と今後~講師:服育研究会 有吉直美
衣服を選ぶ時の基
メインセミナーの心温まる「もったいない」の話に続いては、同じ「もったいない」を別の角度から数値を使って考えてみました。
その手法のひとつがLCA(ライフサイクルアセスメント)です。よく3Rに取り組みましょうなんてことはいいますが、実際どれがどのくらい環境にいいのでしょうか?
もちろんリデュースやリユースの環境負荷は低いのですが、もうひとつのRであるリサイクルするとなった時それがどのくらい環境のためになっているのかきちんと答えるのは難しいものです。
その答えを導くひとつの手法がLCAです。これによりものの流れの環境負荷を数値として「見える化」することができます。
温暖化効果ガスの排出を14%削減
今回は衣服の中でも特に工場作業ユニフォームでのLCA調査の結果を報告させていただきました。
通常のヴァージン原料を使って作り着用後もリサイクルしないという想定Aのユニフォームと、リサイクル原料を使い着用後のユニフォームをケミカルリサイクルにまわすという想定Bのユニフォームとを比較した結果、なんとリサイクルに取り組んだBのユニフォームの方が従来品より14%も温暖化効果ガスの排出を削減することができるという結果が出ました。LCA調査詳細
私たちではこのような研究調査活用しながら衣服を通した環境教育サポートへとつなげていきたいと考えています。
参加者のご感想
- 環境教育をする時リサイクルというけれど本当はよけいに負荷がかかるとかいろいろ聞きかじって何が正しいのか分からなくなっていたんですが、LCAというのを聞いてこれからこのように少しでも負荷がかからないのはどういう方法かひとつずつ検証されていき、何が正しいのか分かっていくんだなと思いました。(中学校 家庭科教諭)
- 衣服のLCAの取り組みで再資源化でCO214%削減、CO2の排出量の3/4が材料段階にあると知り、購入の段階で本当に必要なものを購入し大切に長く着用することが大切なのだと分かりました。(家庭科教諭)
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