施設内(学校内)の安全について
- No.:
- 第1回服育ラボ定期セミナー
- 日時:
- 2007年6月30日(土)
- メイン:
- 施設内(学校内)の安全について
- メイン講師:
- 綜合警備保障株式会社 法人第一営業部 柳原秀昭
- サブ:
- TPOを学ぶ授業作り~宝塚第一中学校の取組みより~
- サブ講師:
- 服育研究会 有吉直美
施設内(学校内)の安全について講師:綜合警備保障株式会社 法人第一営業部 柳原秀昭
第一回「服育ラボ定セミナー」が、6月30日服育ラボにおいて開催されました。 記念すべき第一回目のメインセミナーは、様々な事件・事故が起こる中ますます関心の高まる「学校内の安全」について、『守る』のスペシャリストである綜合警備保障さんからお話をいただきました。
犯罪状況分析と学校(教育機関)のリスク
刑法犯の認知件数は平成15年をピークに減ってきています。しかし本当に平和になってきていると感じることができないのが現在の日本です。
実は子ども被害件数について見てみると、内容によっては増加しており、しかも暴力的なものが上位を占めているのが目立ちます。また、特にわいせつによる被害は、実際に表に出てきた件数が1だとしたら、その裏には被害届を出すことのできない「暗数」が99件あると言われています。
教育現場の二大リスクは「連れ去り」と「(学校への)不審者侵入」です。記事にならない学校への侵入事件は、年間2000件にも上るといわれており、学校外での不審者情報を分析すると子どもたちが危険にあう時間は「登下校時」、場所は「路上」内容は「声かけや痴漢、露出」が多いという現状が浮かび上がってきます。
不審者とは?
ではいったい「不審者」とはどのような人のことを指すのでしょう?
何枚かの人物写真から「誰がついて行ってはいけない人か」を考えました。目つきの悪い人、帽子にサングラスの人、笑顔の人などいろいろな写真がありましたが、答えは「誰にもついて行ってはいけません」です。
なぜならどの人も「知らない人」だからです。不審者を外見だけで判断するのは難しいのです。
日本の欧米化と犯罪理論
今の日本は欧米化してきていると言われます。「集団から個人」という考え方が増える中、住民同士の顔が見えにくくなったり、インターネットなどの普及によって情報が簡単に手に入るようになったりと、昔の日本人が持っていた「集団の中にいるからこそ、義務感を感じ、ルールを守っていた」という感覚が薄れ、既に欧米各国の犯罪率が下がり始めているのに対して、日本の犯罪だけが増加し続けるという事態が近年まで起こっていました。
そんな犯罪を防ぐために大切なのは、「犯罪のチャンス(機会)をなくすこと」です。チャンスがなければ、犯罪は生まれません。 そのために知っておきたい犯罪理論が3つ(割れ窓理論、ハインリッヒの法則、犯罪機会論)あります。
割れた窓を放置しておくと、外部から「その建物は管理されていない」と認識され、割られる窓ガラスが増え、街が荒廃するという「割れ窓理論」。(提唱者 米ニュージャージー州ルトガーズ大学 ジョージ・ケリング博士)
1つの重大事件の裏には、29の小さな事件、300の意識しなかった小さな出来事があるという、1:29:300の法則を導き出した「ハインリッヒの法則」。(ハインリッヒの法則は「労働災害や医療事故など」から分析された法則です。これを「子どもの被害に置き換えております) (提唱者 ハーバード・ウィリアム・ハインリッヒ 米国保健会社に勤務していた安全技師)
「機会」をキーワードに“事前対策”を重視する「犯罪機械論」の3つです。(提唱者 立正大学犯罪社会学 小宮教授)
日頃から気をつけることと緊急時のアドバイス
学校において日頃から気をつけておきたいポイントは、領域性(犯罪者が入りにくい環境)、監視性(周りから見えやすい環境)、抵抗性(子ども達の危機回避能力など)の3つが大切です。特に教職員は、校門、受付、教室、校庭などにて早い段階でチェック(声掛け)することが重要となります。
基本的な緊急時の対応順序は「非常通報→非常包装→避難誘導→不審者対応」ですが、なによりも「暴漢と子どもを近づけないこと、少しでも早く警察に委ねること」が子どもたちを守る上で重要なことなのです。
服装と安全
実は服装で自分たちを守ることもできます。悪の道へと誘いこもうとする大人が声をかけやすいのは、やはり制服などを着崩しているルーズな雰囲気の子どもたちです。「身なりを整える」ことは実は自分を「守る」ことにもつながるのです。
参加者のご感想
- ブロウクンウィンドウズについては以前から気にしていました。荒れた中学校は必ず教室、廊下等が汚く、物が破壊されています。“犯罪”ではないですが“荒れ”を防ぐため“ゴミ、落書き、破壊”については常に気を配っています。本日のお話を聞いて改めて予防策や常日頃の清掃、手入れが大切と思いました。(中学校教諭)
- 特に関心はなかったのですが、ぐいぐい引き込まれる内容でした。女性でも安全面でできることが分かりました。全てのことに「機会」を与えない話は通じますね。(中学校教諭)
- 学校の安全、防犯関係のチェックになったと同時、防犯訓練は実際に合ったものになるようとても参考になった。職員用の訓練や子どもたちの防犯教室も一度やればよいというものでなく何度も実施しなければならないと実感しました。有難うございました。(小学校教諭)
講師のご紹介
- 柳原 秀昭
- 綜合警備保障株式会社
人々の安全を守るプロとして、各地で開催される安全講習会などに参加。昨年度は約30回の講習会に参加し、安全教育の普及に力を注いでいる。 主な講習会先/八王子市教職員パワーアップ研修、香川県学校安全指導員要請講習会、千葉県スクールガード講習会など この他にも学校、PTA、教育委員会等の主催する防犯講習会にて実施。
綜合警備保障ホームページ http://www.alsok.co.jp/
TPOを学ぶ授業作り~宝塚第一中学校の取組みより~講師:服育研究会 有吉直美
服装のTPOを考える授業の始まり
服装は私たちが人と会いその人のことを判断する上で重要な要素になってきます。ここで大切なのはおしゃれが印象をアップするのではなく、TPOにあった着こなしこそが印象をアップするということなのです。しかしTPOに合った服装と一言に言っても漠然とわかってはいても、具体的にどんなものがいいのか分からない生徒が増えてきているのが現状のようです。
今回ご紹介した「服装のTPOを考える」は東京の私服公立中学校で行った授業です。まずは様々な服のTPOを考え、それをオンタイムとオフタイムに分け、それぞれの衣服の特徴(デザイン、カラー、その他)を見つけ自分の生活にいかすというものです。
宝塚第一中学校での取り組み
昨夏、この授業を服育研修において体験し授業内容に共感していただいた宝塚第一中学校の先生が実際にこの内容を授業で行われました。二年生は校外学習で高校訪問を体験する事前学習として、三年生は受験用にとそれぞれの学年の活動との関連をもたせながらの取組みれました。
また学習の最後には「服装点検表」で自分をチェックしたり、参考資料として服のお手入れについての資料をつけるなど、より実際の生活の中で役立てることができるよう工夫をされていました。
先生・生徒さんの感想から
授業を受けた生徒たちからは「全く同じヒトでも、服装が違うだけで、きっちりしている人にもだらしない人にも見える。その人の人柄が顔に表れるように、服にも人柄が出るのだと思った。服装を正すというのは、相手に敬意を払うということだと思った。」という感想を持った生徒さんもいたようです。
授業を行われた先生も「TPOという言葉を知らない、親からも言われたことがない、好きな服を好きなように着用しているというのが生徒の実態であった。生活ルールを守らせる指導でなく、授業展開の中で自然と正しい考え方に導かれていく授業の流れは、生徒には大変説得力がある授業展開でした」と語って下さいました。
社会に出ると様々な年代や立場の人と付き合わなくてはいけなくなってきます。その時どんな人にも好印象で受け入れてもらえるのが、TPOを考えた服装、つまり相手への敬意の気持ちを忘れない服装マナーを守った着こなしなのではないでしょうか。