PI(パーソナルアイデンティティ)のツールとしての服装術が必要です
グローバル化、IT化が進み、あらゆる価値観が急激に変化する今日、その影響は組織における個人の在り方にも及んでいます。組織に依存し、横並びをよしとする旧来の思考・行動パターンを変革することができなければ、取り残され必要とされなくなっても文句を言えない現実があるのです。こうした厳しい環境に生き残るためには、「他者とは違う自分」という存在をあらゆる手段でアピールしていかなければなりません。服装にメッセージを込めてPIのツールとして使いこなすスキルは現代人にとって必須であるといえるでしょう。
しかし、わが国におけるPIの認知度は極めて低く、PIという言葉さえ一般に浸透しておらず、それはわが国に依然として残る「服装術=おしゃれ=軽薄」という誤った理解に起因していることは前回に述べたとおりです。「仕事がデキれば着るものなんてどうでもいい」という考え方も、同根のものと考えてよいでしょう。
服装術とおしゃれは別物です
ここで問題なのは、服装術とおしゃれを同列で論じていることです。そもそも、「おしゃれ」とは自分が好きな服を好きに身に着けて楽しむという、<趣味>の領域に属する行為であり、他人が見てどう感じるかよりも自分自身の満足が優先されます。それに対して「服装術」は、相手に不快な思いをさせないために外見を整えるという<身だしなみ>の延長線に位置するものであり、相手に対して配慮するという意味では<マナー>や<エチケット>の範疇に属すると考えるべきでしょう。つまり、服装術とおしゃれはまったく別物なのです。
服装術はスキルです
さらに言えば、<身だしなみ>が着ているもので「損」をしないようにという、どちらかといえば「守り」のスタンスに立つものであるとすれば、「服装術」は相手に不快な思いをさせないことはもちろん、自分のアイデンティティを積極的にアピールするという「攻め」のスタンスに立つ点で大きく異なるといってよいでしょう。服装術とおしゃれはその本質を異にするものであることがおわかりいただけるでしょうか。
そうは言っても自分にはセンスがないから、と悲観する必要はまったくありません。おしゃれになりたいのであれば多少のセンスは必要でしょうが、しかし、服装術はスキルですから、正しい知識を身につけてそれを実践し、学習を積み重ねることでいくらでも上達することが可能なのです。